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出発 - Thailand vol.1 -

  • Ryusuke Nomura
  • 2011年1月31日
  • 読了時間: 3分

2010年9月14日、大きなバックパックを抱えて、ドキドキしながら京成線に乗り込んだ。目指すは成田空港。海外は卒業旅行のグアムしか行ったことがない、英語も全然分からない。そんな僕がこれから約二ヶ月間、アジアを旅しようとしている。この旅に出ようと思ったきっかけは、沢木耕太郎に憧れた訳でも、東南アジアに何かものすごい魅力を感じた訳でも、ましてや自分探しなどという立派な名目があるわけでもなく、ただの思いつきからだ。たまたま仕事を辞めて時間ができ、どこかに行きたいと思った。どこか遠くへ。行ったことのない場所へ。それがたまたまアジアだったというだけだ。決まっているのは、最初にタイの首都バンコクに行くということだけ。あてのない気ままな旅の始まりを目の前にして、「期待と不安で胸が~」という言葉は、まさにこの時の為にあるのだと実感した。

成田空港でパスポートチェック、出国審査などを無事に済ませ、それでもまだ時間が余っていたので、前の会社の同期や友人に旅立つ旨をメールする。そうこうしているうちに搭乗時間になり、機内に乗り込む。たったの二ヶ月となるか、やっとの2ヶ月となるか、その答えが分かるのは、どちらにしても2ヶ月後だ。エコノミークラスの狭い座席に窮屈さを感じながら、時折襲ってくる不安な気持ちをかき消す為に、無理矢理ビールを胃に流しこむ。その後は酔いも回って寝てしまい、目が覚めて時計に目をやるともうすぐ到着時間だ。約6時間の空の旅は、ほとんど夢の中だった。

機内から降りたときのムワッとした空気が、「あー、日本とは違う場所に来たんだな」と感じさせる。前に並んでいる乗客の見よう見まねで、パスポートチェック、入国審査を済ませる。もっと大変なものだと思っていたが、以外とあっさりしていて拍子抜けした。空港内をうろついていると、この「スワンナプーム国際空港」は、とんでもなく広いことに気が付いた。しかも、かなりキレイでどことなくオシャレな雰囲気さえ漂っている。成田空港より規模も中身も勝っている。もしかすると、タイはかなり発展している国なのかもしれない。しかし、そんなことに感心している暇はなかった。到着時間が深夜0時近くだったため、まずは今夜どこで過ごすかを決めなくてはならなかった。

バンコクにはカオサンロードという旅行者の集まる安宿街があるらしく、そこに行けばどこかしら宿は見つかるとガイドブックに書いてあったので、そこを目指そうと考えていたが、この時間帯の上に外はあいにくの雨。カオサンロードまでの交通機関は深夜でも動いているらしいが、今夜は空港内のベンチで夜を明かすことにした。空港内はコンビニもあるし、こんな夜中に土地勘のない場所を出歩くよりは安全だろう。コンビニで買ったタイ風カップラーメンとミネラルウォーターの夕食を済ませ、バックパックを抱えながらベンチに横たわる。アルミでできたベンチがヒンヤリとして気持ち良い。明日からはどんなことが僕を待っているのだろう。どうやら、不安より期待の方が勝っているようだ。旅が終わるまでこの状態を維持したいと考えながら眠りについた。

翌朝、早い時間に目を覚ます。とりあえず荷物が盗まれていなくてホッとした。トイレで顔を洗いベンチに戻ると、ヒョロヒョロの丸メガネをかけた白人が地べたに座って何かをしていた。何か非常食のようなものを食べているようだ。勇気を出して、「はろー」と声をかけてみる。すると彼はオランダ人で、タイでの旅を終え、これからまたどこか他の国へ行くらしい。全部は聞き取れなかったが、多分そんなようなことを言っていた。僕がこれからアジアを旅すると言うと、「Good ruck」と言い、親指を立てた。僕も「ぐっどらっく」と言って親指を立てた。今まで生きてきた中で、一番「Good ruck」が相応しい場面。旅のスタートとしては、申し分のない朝だった。

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