

川を越える - Guatemala vol.1 -
グアテマラへの道。今まで、国境を越える時は、そのほとんどが、バスか徒歩によるものだった。しかし、今回、無数にあるメキシコ~グアテマラ間の国境の中で、僕が選んだそれは、互いの国土を細い一本の細い川が隔てており、国境を越える者は、小さなボートで、その川を渡ることになる。このルー...


太陽の国 - Mexico vol.3 -
夢の中で、部屋のドアをガンガン叩く音が聞こえる。その音は次第に大きくなり、僕の耳に迫ってきた。2、3秒夢と現実の間をさまよい、なお鳴り止まない音と、スペイン語で何事かを叫ぶ女性の声をはっきりと聞き取れるようになった頃、ようやく、完全に夢の中から抜け出した。外はまだ薄暗く、太...


二通りのメキシコ人 - Mexico vol.2 -
次に向かったのは、パレンケというマヤ文明の遺跡の残る町だった。カンクンから夜行バスに乗って約十二、三時間。実は、この旅に出てから夜行バスに乗るのは初めてで、少し、いや、かなり緊張していた。というのも、中南米の長距離バスは、とにかく盗難が多く、トランクに預けたバックパックがナ...


Hola Mexico - Mexico vol.1 -
カンクンの空港に着き、入国審査官の質問が、英語ではなくスペイン語だった時、今までとは違う文化圏に来たことを実感した。僕は、メキシコに来た。後から聞いた話だが、メキシコという地域は、中米ではなく、北米に属しているらしい。南北に伸びる広大なアメリカ大陸を三等分した時、カナダ、ア...


ニューヨーク 最後の夜 - America vol.2 -
西日が空き地のフェンスの編み目に差し込み、空に紺とオレンジの絵の具が混ざり始めた頃、憧れの地を堪能した充足感を抱えて帰路のつこうと、ハーレム25丁目の駅でメトロの到着を待ってた。すると、不意に、東洋人の男性に日本語で声をかけられた。 「日本人ですか?」...


旅のはじまり - America vol.1 -
中南米の旅への出発地に選んだのは、世界の中心アメリカ合衆国のニューヨークだった。日本から中南米の都市へダイレクトに渡航するのは、航空券代だけでもかなりの額が必要だったため、格安航空券サイトと数日間睨めっこをした結果、日本~ニューヨーク~カンクン(メキシコ)の空路が、最も安価...


クネイトラ - Syria vol.3 -
そこに行くことを決めたのは、2日前の夜のことだった。宿で知り合った日本人と話している時に、その場所の名前を知った。ガイドブックには、半ページのそのまた三分の一程度の大きさでしか紹介されていなかった、その土地の名は、シリアのハイライトとして、僕の胸に、鋭く、深く、刻まれること...


砂漠の夕日 - Syria vol.2 -
砂漠の中の世界遺産。ダマスカス近郊の有名な観光地の一つに、パルミラ遺跡がある。ダマスカス滞在のタイムリミットが迫っていた僕は、柄にもなく、早め早めに予定を立てていた。このパルミラ遺跡に行くことは、ダマスカスに着いた時から、何となく決めていたことだ。...


アラビアの古都 - Syria vol.1 -
シリアへ。翌朝、バスターミナルに戻り、バスでシリア国境を目指した。荒れ果てた荒野の一本道を、ひたすらに突き進む。時折、小高い山々の稜線が、シリアへと向かう張りつめた気持ちを若干和ませながら、僕を乗せたバスは、シリア国境へと進んで行った。...


シリアへの道 - Turkey return vol.1 -
帰りの飛行機はシリア発だったので、一度トルコに戻り、そこからシリアに行かなければならなかった。なぜ、シリアからにしたのかと言うと、僕はずっと、「中東」という地域の持つ、ただならぬ魅力に取り付かれていた。具体的に何かと言われると答えに詰まったが、イスラム教を軸とする、中東地域...